感覚的に「粘度は温度で変わる」というのを皆さんも感じているかと思います。

この「温度で粘度が変わる」というのは、どういう原理なのでしょうか?

 

高分子とは?

清水も厳密には温度によって粘度が変化しますが、ここでは高分子を例にとって説明します。

そもそも高分子とは、「分子量が大きい分子」が定義で、ポリマーと同義です。

全ての物質は原子から作られますが、その原子の集まりが分子です。

数個~百個くらいの原子からできているものを分子は分子でも「低分子」、数千個以上の原子からできているものを「高分子」または「ポリマー」と言います。

 

高分子の運動

物質の緩和時間(緩和時間については前項を参照)は、物質を構成する分子の運動で決まりますが、分子の運動の速さは、

①分子の大きさ

②周囲の分子との相互作用の強さ

③温度

などで変わります。つまり、粘度が変わります。

①は限定された範囲(液体)に大きな分子がたくさん詰まっている様子をイメージして下さい。分子の運動は遅くなりますね(粘度が高い)

②について、まず高分子は大抵ひも状の形をしています。

 

相互作用が強い、という意味はひも状の高分子がどれぐらい強く絡まり合っているか、というイメージになります。

もちろん、強く絡まり合えば緩和時間は長くなります(粘度が高くなる)

③の温度はややイメージがしにくいかと思いますが、分子は温度により運動のスピードが変わります。

温度が高くなると分子のスピードが速くなるので、緩和時間が短くなり、粘度が低くなる、ということです。

 

温度と時間には相互作用がある

前項でも説明した「デボラ数」のスケールで考えると、温度を上げることは、つまり観測者の時間スケールに対してデボラ数がどんどん下がっていく(液体になっていく)ことになります。

ガラスは本来液体であるにも関わらず、分子運動が極端に遅いため、人間には個体に見えるという話をしましたが、ガラスの温度をどんどん上げると、分子運動が早くなり、本来の流体の形になります。

これは「ビデオの早回し」状態で説明されます。

温度を下げると「スロー再生」の状態になります。

言い換えると「温度と時間」には相互作用があるという事です。

 

これを利用して、本来の温度ではある挙動が30万年かかる物質の温度を上げ、挙動を数秒で計測する。

そんなことが普通に行われています。