流体移送において、流体自体の性質に合わせた選定も大切ですが、使用される現場環境に合わせた選定も必要になります。
ここでもエイチツーで経験した事例を参考に解説します。
女性でも作業が出来るように
愛知県大手メーカーB社様より、「今まで接着剤(一斗缶)をタンクの上まで持ち上げて補充していたがポンプで移送出来ないか」と相談頂きました。
酢酸エチルとトルエンの含まれる高粘度液であり、使用箇所は防爆指定箇所でした。
その為、エアダイヤフラムポンプADD型のステンレス仕様で提案しました。
接着剤の粘度は12000CPでしたので、余裕を持って25A口径を選定。
問題無く移送をクリアしました。その後、動作音軽減の為にグレードを上げたサイレンサーを追加、またポンプを据え付ける架台(ステンレス)も特注製作しました。
ユーザー様からは「女性でも作業が出来るように、という会社の方針の為、とても助かった」と嬉しいお言葉を頂きました。
自吸が必要な場合は要注意
今件のように、ペール缶の地面に置き、ポンプがペール缶より上にある場合、「自吸能力」が必要になります。
高粘度液移送の理想としては、
引き抜く容器がポンプより上にあり、自重で流体がポンプに流れ込んでくる設置が理想です。
しかし、今件のように自吸が必要な場合、ホースの太さを含め、慎重に検討する必要があります。
というのも、あらゆるポンプには「吸い込みの限界」存在するからです。
吸い込み能力の限界
ポンプ作用(吸い込み)はポンプケーシング内に負圧を作り、そこを満たそうとする流体の作用により吸い込みが実現します。
しかし構造上、ロスが必ず生じますのでポンプの吸い上げ能力はどんなポンプでもよくて8m、普通は6m程度です。
これが高粘度流体(特に非ニュートン流体)になると、配管抵抗を水で想定していた場合とかなり変わってきますので要注意です。
どうしても長い距離を自吸したいのであれば、
・配管を太く
・流速を遅く
するよう工夫して下さい。
また、自吸能力には限界がありますが、吐出能力は原理上どこまでも可能です。
高粘度流体はなるべく自重でポンプへ落ちてくるようにし、圧送で押し込むようにするのが、思わぬトラブルを回避する近道です。
自吸を試したい場合は、ぜひデモ機での検証を行われるのをお勧めします。