流体移送で欠かすことのできない要素「粘度」。
【cP】や【mPa/s】という単位であらわされる粘度の大きさですが、
実はそれだけでは無いんです。
「粘度」の応用範囲は広く流体力学はもちろん、レオロジーという分野まで及びます。
奥が深い「粘度」の世界をわかりやすく再構築してみました。
※【レオロジー】とは?レオロジーとは、物質の変形と流動に関する現象を解釈する科学。
それでは身近な物から実際の粘度はどの程度なのか?をリストにしてみました。
※表記載数値は代表値もしくは平均値になります。流体移送をお考えの際はあくまでご参考に使用して下さい。
粘度ってなに?
粘度とは、流体の粘っこさを表す尺度の事です。
「どろどろ」「とろとろ」「さらさら」など、粘っこさを表現する擬音語はたくさんありますが、それを数字で表したものが「粘度」になります。
粘度の定義は、応力をひずみ速度で割ったものを言います。
粘度の単位はmPa/sになり、従来単位であるcPもよく使われます。
色々なモノに利用される「粘度」
モノ作りの視点から見ると、粘度は色々なモノに利用されています。
例えば、歯磨き粉。
歯磨き粉はチューブから出る時はギュッと押すだけで出てきますが、歯ブラシの上に乗せたらそこに留まるようになっています。
歯ブラシの上に乗せたらすぐに垂れてしまうような歯磨き粉は見たことがありませんね。
つまり歯磨き粉はチューブから出てくる時は液体の性質を(流れる)歯ブラシに乗った時には個体のような性質(留まる)を持っています。
これも粘度の奥深い性質をカスタマイズした結果です。
別の例を見てみます。
瓶詰めされたハチミツは、かき混ぜると固いですが、パンに垂らすとだらりと垂れます。
歯磨き粉もハチミツも、人が使いやすいように矛盾した性質を併せ持つようにカスタマイズされた製品です。
ニュートン流体/非ニュートン流体とは?
粘度という視点で見たときに、流体は以下の2つに分けることができます。
・ニュートン流体
・非ニュートン流体
ニュートン流体とは、いわゆる水やシリコーンオイルなどで、「粘度がひずみ速度で変化しない」流体のことです。
非ニュートン流体は「粘度がひずみ速度で変化する」流体の事です。
教科書的に言われてもわかりにくいので、ボールペンのゲルインクで考えてみます。
ボールペンのゲルインクは使用していない間はゲル状の状態にあります。ゲル状だからこそ、漏れたり、垂れたりしないのです。
いざボールペンを使う時は、ペン先のボールが回転しゲルインクに応力(ひずみ速度)を与え、ゲルがゾル化し、字が書けるようになる、という仕組みです。
つまりゲルインクは「粘度がひずみ速度で変化」するので、非ニュートン流体という事になります。
この世の流体のほとんどが非ニュートン流体だと言わせており、非ニュートン流体も色々な種類に分けられます。
流体移送においては、対象流体が非ニュートン流体である場合、特にその特性については考慮が必要になります。詳しくは次ページにて説明します。