高粘度ポンプのトラブル、実は「粘度」に対する誤解から生まれていることも少なくありません。
同じ「ドロッとした液体」でも、温度やせん断、固形分の有無などで性質は大きく異なります。
ここでは高粘度流体に詳しくない人にもわかりやすく解説いたします。
1.粘度が高ければ全部「同じように重い」んでしょ?
粘度が高い=ねっとり・ドロドロとした感じで「重い」もの、というイメージがありませんか?
実は同じ高粘度でも「流れ方」が違います。
例えば、シロップとグリース、どちらも高粘度ですが、流れの性質が異なります。
・シロップ → 温度が上がると一気にサラサラに
・グリース → 温度を上げても形が崩れるだけで、粘度が大きく落ちにくい
同じ「高粘度」といっても、ポンプ負荷は全く別物。
誤ったポンプを選ぶと吸えない・流れない・モーター過負荷が起こってしまいます。
2.粘度は1つの数値を見ればじゅうぶん?
粘度の基準は1つでしょ?
そんなことはありません。粘度には測定条件があります。1つの数値では不十分です。
粘度は下記条件で大きく変わります。
・温度
・せん断速度(撹拌や流れるスピード)
・測定方法(動粘度、絶対粘度、B型粘度計など)
たとえば、B型粘度計 10,000mPa・s と表示されていても…
→ 温度が25℃か40℃かで大きく違う
→ 低せん断で測ったか、高せん断で測ったかでも変わる
同じ「10,000mPa・s」でも別物の可能性があるため、ポンプの選定基準として単一の粘度値だけを信じてはいけません。
3.粘度が高いとポンプが壊れやすい?
誤解されがちですが、「高粘度=故障しやすい」ではありません。
正しくは、高粘度を想定していないポンプを使うと壊れるだけです。
例:NGなケース
- うず巻ポンプで高粘度流体を吸わせる
- モーター容量ギリギリで運転する
- インペラとケーシングの隙間が狭すぎる
適合した構造なら安心
- ロータリーポンプ
- ダイヤフラムポンプ
- スクリューポンプ
これらは「高粘度前提」で設計されています。
4.冬と夏で同じ粘度じゃないの?液体ってそんなに変わる?
夏は熱さでサラサラになりやすく、冬は寒さで固まりやすい・・・そんな印象ありませんか?
実際のところ、温度でどのくらい粘度が変わるのでしょうか?
実は温度差10℃で粘度が2~5倍以上変わることがあるんです。
例えば、食品シロップの粘度変化は…
- 20℃ → 約10,000mPa・s
- 40℃ → 約2,000mPa・s
約1/5にも低下するんです。
- 冬は吸い込み不能、夏は流れすぎ
- 回転数を一定にすると品質ムラの原因
- モーター負荷が大きく変動
季節による粘度変化は、ポンプ選定で最も重要な要素の一つです。
5.粘度が高ければ流れにくい=低ければ何でも流れる?
粘度が高い=ドロドロで流れにくい、粘度が低い=サラサラで流れやすい
というイメージを持っている方も少なくないですよね。
実は低粘度でも「比重」や「固形分」で流れにくくなる場合があります。
粘度だけで判断すると危険です。
例:低粘度だけど流れにくいケース
- 比重が高いスラリー
- 微細な固形分を含む液(化粧品原料など)
- 表面張力が高く、配管に付着しやすい液
吸い込みが悪く、粘度が低いのになぜか流れないことが起こります。
6.まとめ
粘度に対する誤解はトラブルの元です。
- 同じ「高粘度」でも液体によって性質は別物
- 粘度は温度・せん断・測定条件で変わる
- 季節で粘度は大きく変化する
- 粘度以外(比重・固形分・表面張力)も流動性に影響
粘度を一括りで判断するのは危険です。
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