高粘度流体は「温度」で別物になる。

「昨日と同じ条件なのに、今日は流量が出ない」
「モーターの音が重くなった気がする」

高粘度流体を扱う現場では、こうした“違和感”が突然現れます。
その正体の多くは、粘度のわずかな変化です。

とくに冬場や停止後の立ち上げ時、
温度が10℃下がっただけで、粘度は2倍・3倍になることも珍しくありません。

温度と粘度の関係を「現場感覚」で見てみましょう。

粘度とは何か?現場目線での定義

粘度とは、簡単に言えば
液体が流れようとする動きに、どれだけ抵抗するか」です。

  • 水:ほぼ抵抗なし(約1 mPa・s)
  • 食用油:やや重い(50〜100 mPa・s)
  • シロップ:ねっとり(数千 mPa・s)

重要なのは、粘度は一定ではないという点です。
温度、せん断、時間によって簡単に変わります。


粘度は温度でどれくらい変わるのか?

多くの液体は、温度が下がると急激に粘度が上がります。

一般的な傾向(イメージ)

温度変化粘度の変化
−5℃約1.3倍
−10℃約2倍
−20℃3〜5倍以上

※ 油脂・樹脂・シロップ・接着剤では特に顕著

温度差=性能差
と考える必要があります。


なぜ「10℃」が危険ラインなのか?

理由は、粘度の変化が直線ではないからです。

  • 20℃ → 15℃:少し重い
  • 15℃ → 10℃:急に重い
  • 10℃ → 5℃:ほぼ別物

高粘度流体では、
ある温度を下回ると一気に流れなくなる臨界点が存在します。

現場でよくある「温度×粘度トラブル」

ケース①:夜間停止 → 朝イチ動かない

  • 配管内の液が冷え切る
  • 粘度が想定の2〜3倍
  • 吸い込み不良・過負荷停止

ケース②:冬だけ流量が出ない

  • 日中は問題なし
  • 朝夕だけ流量低下
  • 原因不明として扱われがち

実際は 温度低下による層流抵抗増大 が原因なのです。


温度が下がると「何が変わる」のか?

① 層流がさらに強くなる

  • 粘度上昇 → レイノルズ数低下
  • 完全な層流状態へ
  • 圧力損失が急増

② 吸い込み性能が激減

  • 液体が「流れ込まない」
  • 引っ張っても来ない
  • キャビテーション・空転発生

③ 必要トルクが跳ね上がる

  • 起動トルクが足りない
  • モーター電流が急増
  • 保護装置が作動

温度×粘度を考えた現場対策

✔ 「最低温度」を基準に設計する

通常運転温度ではなく、

  • 冬場
  • 停止後
  • 夜間放置

を前提にするのが安全設計。

✔ 立ち上げ時は“ゆっくり”

  • いきなり定格回転数にしない
  • 低速で温めながら送液
  • 高粘度ほど重要

✔ ポンプ選定は「最大粘度」で考える

  • 通常運転時ではなく、最悪条件(冬・停止後・低温)を基準にする。

まとめ|温度を制する者が、粘度を制する

  • 粘度は温度で簡単に倍以上変わる
  • 高粘度流体では10℃差が致命的
  • 設計・運用は最低温度基準が鉄則

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